理事長 室賀です。
2023年ももうすぐ終わりですがスリングショット愛好家の皆さん、スリングショット楽しんでますか?!
今年はたくさん楽しめた人、時間がなくてあまり楽しめなかった人様々かと思いますが、スリングショット愛好家さんが一番悩むのが「撃つ場所が無い」ということではないでしょうか。
かくいう私も協会設立前はやっぱり自宅室内でたった5mの距離で細々楽しんでいるだけでしたし、たまに誰もいない隣の市の河川敷まで出向いて撃ったりしてました。
「え?河川敷なんかで撃っていいの?」
と思われるかもしれませんが、基本的に河川敷はその自治体が定めた決まりに則れば、他人に迷惑をかけなければ何をして遊んでもいい場所です。もちろん安全策を十分確保すること、及び、傍から見ても安全策をちゃんと取ってるなと見えることは当然ですが。
例えば『直火禁止』とか『ゴミ持ち帰り』とか。なのでバーベキュー台を使い地面へのダメージを防ぎ、ゴミの片付けもちゃんとやればバーベキューだってOKです(※バーベキュー自体を禁止している場所ももちろんあります)
なので、ワタクシもご多分に漏れず屋外でスリングショットを楽しみたい時や狭山市支部の屋外練習会などは河川敷で行うようにしていました。(休日でもほとんど人がこない秘密の場所なのです)
一人で撃ちっぱなしで楽しむ時は自然に還るクレイ弾で、向こう岸の土手が十分高い川に向かって撃つようにしています。(土手の向こう側は誰も入り込むことができない草っぱら)
ただそれでもたまーに河川敷に人はいるし、撃ってる川方向を釣り人がジャブジャブ横切るなんてこともしょっちゅうありました。釣りを楽しむのも自由なのでそれはそれで仕方のないことですよね。
なので、こんな感じで普段から周りに注意を凝らして万が一にも人がいる方向に撃たないよう注意していました。
たまには(面倒だなぁ)なんて思うこともありますが、ある程度自由に撃てる場所などなかなか無いこの現状で、この河川敷を大事にしたいなぁと考えていた矢先、とうとう由々しき事態が発生してしまいました・・・!
11月の某日、いつものように嫁さんと愛車ジムニーで奥まった河川敷に練習にいった帰りにガード下に差しかかるとヘルメットをかぶった作業員らしき人たちが何やら柵を立て始めています。
それまでにもこの河川敷に来ると、たまにダンプカーが入ってきたりヘルメットをかぶった人が測量っぽいことをしていたのを目にしていたので「工事でもするのかな?」程度に思ってはいましたので、近くの作業員の方に聞いてみました。
私「工事でもあるんですか?」
作「はい、橋脚工事です。なので工事期間は立ち入り禁止になっちゃいます」
私「どれくらいの期間工事するんですか?」
作「12月1日から翌年の5月末日までの6ヶ月間で4年間に渡って行います」
私「4年間ですか?!」
作「川の水が少ない渇水期でして。6月1日から11月末日までは工事休止期間となります。今、奥から出てこられましたけど奥に何かあるんですか?」
私「奥にだだっ広い河川敷があるんですよー。でもここが工事で立ち入り禁止じゃ通過もできないですよね?」
作「ですねぇ・・・」
ガーーン・・・
12月1日から翌年の5月末日までの6ヶ月間は立ち入り禁止。6月1日から11月末日までは工事休止期間なのでOK。でも7月8月は暑くて日陰の無い河川敷では練習は無理です。
ということは、実質、6月と10月11月の3ヶ月間しかできません。
ガーーン ガーーン・・・
(うぅ、せっかく良い場所だったのになぁ)
日本スリングショット協会としてスリングショットを広めようと活動し始めた途端のこの立ち入り禁止劇。
公民館登録してあるので公民館でもいいといえばいいんですが、いかんせんスチール弾が撃てません。プラ弾のみです。
世界のスリングショット大会はスチール弾です。スチール弾で練習したいとなると場所がグッと限られてくるのが日本の現状。
(また撃てる場所、練習場所を探さないといけないな・・・)
ガックリしてばっかりでも仕方ありません。次の日から練習場所探しを始めました。
まず頭に浮かんだのが近所の自治体管理の運動広場です。少年サッカーとか大人のソフトボール、マレットゴルフなどなどで使われる、どこの街にもあるような運動広場。
ワタクシの息子も子供のころはここのサッカーチームに所属していたこともあったし、嫁さんと散歩でこの運動広場を通った時は(ここなんかベストな場所だよなぁ)といつも思っていました。
実際、ベストな場所なんですね。ソフトボールが丸々2面余裕で取れるほどの広さと一番奥は鬱蒼とした森に面しています。
あんな鬱蒼とした森に人はまず入り込もうとは思いませんので森に向かって撃てば安全策は十分です。(もちろん森にさえ弾が飛ばないように十分なバックストップを施してですが)
スリングショット競技などそんなに広大な面積はいりませんから、この端っこで十分可能です。
よし、当たってみるか?!
ということで、自治会館に行って詳細を聞くと、管理している事務局の事務長さんの電話番号を教えていただきました。
さっそく電話をしてみると声の感じでは70歳くらい、中々話の分かる方のようです。日を決めて自治会館で会うことになりました。
当日、自治会館でお会いすると声のイメージとドンピシャの方でした。
持参した資料を見てもらいながら、協会を立ち上げたこと、日本にスリングショット文化を根付かせたいこと、世界で活躍できる選手を育てたいことなどなど熱意を込めて話をすると大変乗り気です。
『いやぁ年々利用してくれる団体さんが減ってきて新しい方をお迎えしたいと思っていたところなんですよ』
『まぁそれでも休日の利用だと他の団体さんとバッティングしちゃうんだけど端っこくらいのスペースがあればいいみたいだし、いいんじゃないかな!』
『一応、利用団体の代表さんたちに話を通しておきたいので来月の総会に来てもらって説明してよ』
『今からだと正式には来年からの利用だけど、すぐやりたいでしょ?ね』
はい、ぜひお願いします!と即答したほどの聞いてみてビックリの進み具合でした。
(こりゃあ決まりだな〜、あそこなら家からも近いし専有スペースを割り当ててくれるっていうし、最高だな〜)
ということで1ヶ月後の11月某日、半ば喜び勇んで自治会館へと向かいました。
時間につくと19団体の代表者がパラパラと集まってきました。
資料を配布され、今年の利用報告や来年の利用についての話が一通り終わったところで、あの人の良さそうな事務長さんから、
『今度、運動広場を正式に使いたいという申し出のあった日本スリングショット協会の室賀さんからのご説明があります。室賀さんどうぞ』
さぁいよいよ出番です。
事前にしっかり作っておいた19部のプレゼン資料を嫁さんに配ってもらい、スリングショット自体も触ってもらいながら説明しました。
ただでさえ危ないと揶揄されかねないスリングショットです。用意したプレゼン資料は特に安全対策にかなりのスペースを取って作り、事務長さんと相対で話した以上の熱量を持って説明しました。
協会を立ち上げたこと、日本にスリングショット文化を根付かせたいこと、世界で活躍できる選手を育てたいこと、子供の集中力養成に役立つこと、激しい運動のできない高齢者にこそ取り組んでいただきたいスポーツであること、安全対策は二重三重にも施すこと、さらには狭山市を日本のスリングショット文化発祥の地としたいことなどなど。
本業以上の熱量を持ってプレゼンしました。
すると・・・
「いやいや、これあぶねーだろ?!」
「子供に当たったらどうすんだ?」
「ゴルフの素振りだって認めてねーんだ」
「こりゃあダメなやつだ」
はじめて会ったにも関わらず礼儀を失した荒い言葉づかいの数々。しかも大切にしているスリングショットを雑に扱う人さえいる始末です。
反対意見はあっていいと思うんですね。話し合い、説明、ですから。
でも、いい大人が礼儀を失し総攻撃的な物言いをするとは・・・
しかも、さらに驚いたのが、これまで好意的だった事務長が一転手のひら返しのように言い放った一言。
「公民館や河川敷でやってりゃいいじゃない」
「わざわざウチへ来なくても」
(え?なに、この人??)開いた口が塞がりません。
結局、その夜はコテンパンに叩かれてあっけなく終わりました。
ここ何年も腹を立てることなど無かった私ですが、代表者たちのあの物言い、事務長の手のひら返しにはさすがにムッとしました。
ですが、ムッとしてもダメなものはダメなので仕方がありません。
一緒に行った嫁さんのほうが腹を立てていたくらいです。
その夜は普通に夕食をとるのも落ち着かず、夫婦で居酒屋に行きました。
あのコテンパン事件の数日後、やっと気力も戻ってきたので新たな場所探しを再び始めました。
嫁さんからは「あなたタフよねー、私は今でもムカつきがおさまらないわよー」
なんて言われますが、いつまでもクヨクヨウジウジしていても始まらないし、理事長の自分が率先して動かないと動くものも動きません。
もうそれからは探しに探しまくりました。
いつも家のメンテナンスでお世話になっている工務店さんの資材置場を使わせてもらえないか尋ねたり、市内の屋外公共運動施設十数か所ある中で絶対に無理そうなものを除いた6箇所全て見に行って管理人の方に聞いてみたり、地域交流センターや市役所のスポーツ振興課にまで相談に行ってみました。
ですが、頭から反対はされないものの良い話は一向に聞くことができません。
(もう当分、河川敷でやるしかないかな・・・)
河川敷でもいいといえばいいんです。
基本、河川敷はその自治体で決められたことを守れば誰でも自由に遊ぶことが可能です。
でも「誰でも自由に」なので不都合もあるわけですね。
ほとんど人の来ない河川敷を厳選してはいるものの、それでもたまに釣りをする人やデイキャンプを楽しんでいる人がいる時もあります。
あとは人の目。
安全策を取った上で正々堂々とやってはいますが、それでも理解の無い人は少なからずいるということは知っています。
なので、いつ何時難癖をつけてこられないとも限らないわけです。
幸い今まで一度もそういったことはありませんが、これからもないとは言えません。
誰にも気兼ねせずに正式に活動できるところがあればなぁ。今の日本じゃ夢のまた夢だよなぁ。
(諦めて河川敷で細々と活動するか。新しい河川敷を見つけないとなぁ・・・)
そんなことを考えながら数日たった頃、いつもと違うコースを嫁さんと朝の散歩をしていました。
いつもは静かな近所の住宅地を歩くんですが、今日は反対の森を抜けるコースに向かいました。
例の運動広場を通り抜けて森の中の散歩道。森林浴でいい気持ちです。
ほどなくしてまた住宅地へ抜け出ようとする時に、ポカンと開けた空き地が目に飛び込んできました。
それまでもこの森のコース散歩でこの空き地があるのは知っていました。
特別養護施設所有の広大な空き地で「許可なく立ち入ることを禁ず」の看板も立ててありました。
立ち入り禁止だけに誰もいません。
(いいよなぁ、こんなところを使えたらなぁ・・・)
(養護施設の土地だし貸してくれっこないよなぁ・・・)
それからは毎日この森のコースを散歩しては空き地を眺めながら素通りする日が続きました。
(あの場所いいよなぁ いいよなぁ いいよなぁ・・・)
(ダメもとで当たってみるか?)
よし、ダメなら次作戦でどんどん行ってみよう。
ということで前回作っておいた資料を携えて飛び込みで行ってみました。
受付で名のり責任者の方を呼んでもらいました。
すると出てきたのは女性の施設長さんでした。
(おぉ、、女性だ。。開口一番危ないの連発かなぁ)
と、一瞬臆したものの、そこは平静を装ってきちんと丁寧に説明しました。
「・・・ということで裏の空き地を使わせていただけませんでしょうか?」
それまで笑みを浮かべながら私の話を聞いてくれた施設長さんは言いました。
「なるほど分かりました。裏の空き地は今のところ使い道の無い土地ですし、私としては安全策を取っていただければ地域の皆さんに使っていただきたいと思っています」
(えぇぇえ?マジ?)
「ですが、私の一存では決められませんので理事長に聞いて後日ご連絡させていただきますね」
(だよなぁ、これであとで理事長に聞いたらダメでしたってパターンだな)
でも、こちらの趣旨を話していく中で、決して偏った考えを言うでもなく笑顔で聞いてくれていました。
そういう人もいる。
それが分かっただけでも飛び込んだ価値はあるなと思いました。
会って話しを聞いていただいたことに丁寧にお礼を言って帰宅。
すると数時間後に電話が。
(断りの電話だな。まぁしょうがないよな養護施設の土地だしね)
と思いつつ電話に出ると・・・
『理事長がぜひ使ってくださいとのことです!』
(えーーー!おいおいおいおいマジかよぉぉ!やった・・・!!)
分かってくれる人は分かってくれるものです。
しかも無償で貸していただけるとは。
想いが伝わりました。
想いがあるなら諦めずに続けていれば願いは叶うんですね。
想いは伝わるってことなんですね。
その夜、嫁さんと今度は祝杯をかたむけました。
日本スリングショット協会、小さな一歩だけど大きな前進です!